要約
この課では、関数を演算の対象として扱う。実関数の和、積、商、合成をその定義域とともに定義し、合成が可換でないことを示す。集合・関係・関数の課から合成の結合性、単射性、逆関数の定理を受け継ぎ、実関数に固有の事柄を付け加える。すなわち、合成の定義域、単調関数、狭義単調関数の逆関数、変数について解き定義域を制限することによる逆関数の計算、そして逆関数のグラフであり、これはもとのグラフを直線 に関して対称移動したものである。続いて偶関数と奇関数、グラフの平行移動・拡大縮小・対称移動、区分的に定義された関数と絶対値を含む関数を扱う。
学習目標
- 関数の和、積、商、合成をつくり、演算する関数の定義域から各結果の定義域を求める。
- 関数が単射、全射、全単射のいずれであるかを判定し、必要に応じて定義域を制限して逆関数を求める。
- グラフの対称性を見分ける。すなわち、縦軸に関する対称性、原点に関する対称性、直線 に関する対称性である。
- 平行移動、拡大縮小、対称移動、絶対値によって、ある関数のグラフから別の関数のグラフを得る。その際、それらを適用する順序を守る。
- 関数の演算と逆関数を応用問題で解釈する。たとえばレンズの公式では、逆関数が物体と像の役割を入れ替える。
関数の演算
代数関数の課では、関数を、定義域の各元にただ一つの像を対応させる規則として定義し、代数関数が変数から和、積、商、累乗根によってつくられることを見た。これらの演算は関数どうしの演算と考えることができる。二つの関数は点ごとに足し、掛け、割ることができ、一方を他方の結果に適用することもできる。そうであるならば、複雑な関数はより簡単な関数に分解して調べられる。
と を実変数の実関数とする。その和 、差 、積 は、各 にそれぞれ像の和、差、積を対応させる関数であり、商 は各 に像の商を対応させる。
これらの式が意味をもつためには、 が両方の定義域に属さなければならない。商ではさらに、像 が零になってはならない。ここから演算の定義域が得られる。
差の定義域と積の定義域は和の定義域と一致し、関数と数 の積は定数関数 との積であり、その定義域は である。しかし、演算の定義域は演算する関数から決まるのであって、簡約したあとに得られる式から決まるのではない。 かつ ならば、商はその定義域全体で と一致するが、その定義域は を含まない。なぜなら だからである。商のグラフは直線 から点 を除いたものである。同様に、 かつ ならば、和は でのみ定義される。これは二つの定義域の唯一の共通点である。最初の例のように除かれる点は、符号表と不等式の課で除去可能な点とよばれ、グラフへの影響は有理関数の課で調べられる。
関数の合成
関数どうしの最も重要な演算は、数どうしの演算には類例がない。それは、ある関数を別の関数の結果に適用することである。 と の合成は で表され、「 と の合成」と読まれる。これは、まず を、次に を適用する関数である。
二台の機械をつないだものと考えることができる。 が に入って が出てきて、その数が に入って が出てくる。この連結が働くためには、 が の定義域に属し、その像が の定義域に属さなければならない。
順序に注意してほしい。 では右に書かれた関数が先にはたらく。代数関数はより簡単な関数の合成である。たとえば、 は平方根と の合成であり、この構造を見抜くことがその定義域を求める鍵となる。
、 とする。関数 と をその定義域とともに求め、比較せよ。図は各合成を三本の数直線をたどる道筋として表す。 の数直線、第一の像の数直線、第二の像の数直線である。
証明
の定義域は であり、 の定義域は非負の実数からなる。 を計算するには、像 が非負でなければならない。それを負にする の値、たとえば は、二台目の機械を通らない。
平方の差を因数分解する。積の符号についての補題により、二つの因数はともに非負でなければならない。両方が負であるためには、 と が同時に成り立つ必要があるからである。
については、数 が の定義域に属さなければならず、 はつねに の定義域に属する。簡約すると式から根号の痕跡は消えるが、定義域はそれを保っている。
二つの合成は異なる関数である。定義域が異なり、両方に共通な同じ点、たとえば で異なる値をとる。したがって、合成は可換でない。
合成は可換ではないが、結合的である。三つの関数を続けて適用するとき、はじめの二つを先にまとめても、あとの二つを先にまとめても同じである。与えられた集合のあいだの関数については、第一単元の集合・関係・関数の課で証明された。実関数に固有なのは定義域だけであり、ここでは定義域はあらかじめ宣言されるのではなく、式から導かれる。しかし、合成の定義域の定義を二度適用すると、数 が の定義域に属するのは、それが の定義域に属し、その像 が の定義域に属し、 が の定義域に属するとき、かつそのときに限る。そして についても同じ条件が得られる。この共通の定義域に制限すれば、続けて適用される関数は集合のあいだの関数であり、あの課の定理によって、どちらの場合も値は となる。それゆえ単に と書く。
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