要約
この課では、正の底をもつ累乗を、有理数を指数とする累乗の上限として任意の実数の指数へ拡張し、この定義がもとの定義を延長すること、累乗が指数について狭義単調であること、指数法則が引き続き成り立つことを証明する。続いて指数関数を調べる。その定義域、完備性とベルヌーイの不等式によって求められる値域、単調性、水平漸近線、異なる底の比較、底 と の間の対称性、そしてグラフの変換である。ベルヌーイの不等式を用いて、指数関数が限りなく増加し、ついには累乗を追い越すことを示す。問題では、無理数を指数とする累乗を電卓なしで比較し、指数関数をその関数方程式によって特徴づけ、 と放物線 の交点の個数を数える。
学習目標
- 実数の完備性を用いて正の底の実数を指数とする累乗を定義し、それが有理数を指数とする累乗を延長することを正当化する。
- 指数についての累乗の単調性と法則 および を、有理数乗の間のはさみうちの議論によって証明する。
- 指数関数(定義域、値域、単調性、漸近線、底の比較)を記述し、それがすべての正の値をとることを証明し、その変換のグラフをかく。
- 無理数を指数とする累乗を比較し、簡単な指数不等式を解き、累乗と比べた指数関数の増加について推論する。
実数を指数とする累乗
有理数の指数の課では、 が定義され(ただし 、 は有理数)、その定義が指数を表す分数によらないこと、指数法則が成り立つこと、そして ならば累乗は指数とともに増加すること、すなわち が有理数ならば であることが証明された。しかし、 のような式は意味をもたないままである。 は分数ではなく、それを定める累乗根も整数乗もないからである。
ところで、 は有理数 、、、 より大きく、それらは下からそれに近づく。そして累乗 、、、 は増加数列をなし、その値はおよそ 2;2.639;2.657 および 2.665 である。これらのどれも を超えない。これらの指数はすべて より小さいからである。そうであれば、 を、累乗 (ただし は有理数で )のどれにも超えられない最小の数として、すなわち上限として定義するのが自然である。その存在は実数の完備性によって保証される。完備性は数の集合の課で紹介された。
上限による定義
とし、 を実数とする。 を、累乗 (ただし は有理数で )全体の集合とする。実数を指数とする累乗 とは の上限のことである。 ならば と定める。ここで底 は より大きい。また、 と定める。ここで は任意の実数である。
この定義は証明すべき二つの主張を含んでいる。上限が存在すること、そして が有理数ならば新しい数 がすでに知られている数と同じであることである。後者がなければ、記号 は有理数の指数に対して二つの意味をもってしまう。
とする。任意の実数 に対して、集合 は空でなく上に有界であり、したがって上限をもつ。 が有理数ならば、その上限は有理数を指数とする累乗 である。
有理数の小数表示の課で証明されたアルキメデスの性質と、有理数乗の単調性を用いる。図は 、 の場合をたどる。有理数乗の階段は に向かって上るが、そこには達しない。
証明
アルキメデスの性質により、自然数 で より大きいものが存在する。整数 は より小さい有理数であるから、その累乗は に属する。よってこの集合は空でない。
同様に、自然数 で より大きいものが存在する。 が有理数で ならば であり、有理数乗の単調性により である。つまり数 は の上界である。
完備性により、空でない有界な集合 は上限をもち、それが定義における数 である。上界であるということは、指数が 以下である有理数乗のどれもそれを超えないことを意味する。
が有理数ならば、有理数乗 は に属し( として)、単調性により の上界である。集合の元でその集合の上界であるものはその上限である。それより小さい数はどれも上界でなくなるからである。二つの定義は一致する。
より小さい底に対する定義も、もとの定義を延長している。 で が有理数ならば、有理数の指数の法則により だからである。さらに、定義からただちに、よく使われる規則が導かれる。任意の底 と任意の実数 に対して、逆数の底の累乗は反数の指数の累乗である。実際、 ならば底 は より小さく、定義により である。 ならば底 は より大きく、 の定義はまさに である。
単調性
定義の最初の使い道は、 を有理数乗の間に位置づけることである。底が より大きいとき、 より小さいどの有理数の指数も より小さい累乗を与え、それより大きいどの有理数の指数も、より大きい累乗を与える。このことから任意の実数の指数に対する単調性が導かれる。
とし、 を実数とする。 と が有理数で ならば、 である(はさみうち)。したがって、 が実数ならば、( のとき)、( のとき)である(単調性)。さらに、 が任意の底 と任意の実数 に対して成り立つ。
実数直線の課で証明された有理数の稠密性を用いる。相異なる二つの実数の間には必ず有理数がある。図は のグラフ上で、 に近い有理数が値 をはさみこむ様子を示す。
証明
稠密性により、有理数 で となるものがある。その累乗は に属するから上限を超えない。また有理数乗の単調性により より大きい。
有理数 で となるものもある。 のどの累乗も指数が より小さく、したがって より小さい。この数は の上界であり、上界のうち最小のものである上限より小さくはない。
の場合の単調性。 ならば、稠密性により両者の間に有理数 があり、はさみうちを一度は に、もう一度は に適用すると不等式が得られる。
ならば、底 は より大きく、反数の指数は をみたす。以上のことと定義により、不等号の向きが逆になる。
正値性。 ならば、上限は のどの元よりも小さくなく、それらの元は有理数乗であり、有理数乗の課により正である。 ならば、数 は底 の累乗であり、また である。
ならば、単調性は両方向に読める。任意の実数 と に対して、 となるのは のとき、かつそのときに限り、 となるのは のとき、かつそのときに限る。実際、もし ならば となるはずである。底が と の間にあるときは、不等号を逆にして同値が成り立つ。こうして同じ底の累乗は、指数を比べることによって比較される。
コンテンツを読み込んでいます…