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Topos Uranos

要約

この課では、組版が求める正確さで本文を書く方法を学ぶ。空行または \par で始まる段落と、\\ や \newline による単なる改行とを区別し、改行が段落の代わりをしてはならない理由を説明する。垂直方向の空きと、それを控えめに使うべき理由を示す。水平方向の空きとして、語間の空白、改行を禁じるチルダ、細いスペース、babel が言語に応じて調整するピリオドの後の空き、そして luatexja が和文と欧文の間に自動で入れる空きを扱う。キーボードでは一つにまとめられている四つの記号、すなわちハイフン、二分ダッシュ、全角ダッシュ、マイナス記号を、日本語と英語の組版での使い方とともに扱う。さらに、直接入力または csquotes による引用符、三点リーダー、LuaLaTeX が受け付ける Unicode の直接入力、そして本文と数式の中で小数点・位取り・パーセントに注意が要る数を扱う。

学習目標

  1. 段落を空行で区切り、改行は段落ではなく行が単位となる場合のために取っておく。
  2. 語や数の組ごとに、通常のスペース、チルダ、細いスペース、空きなしのいずれかを選ぶ。
  3. ハイフン、二分ダッシュ、全角ダッシュ、マイナス記号を、その言語の組版の慣習に従って正しい場所に書き、和文の約物との対応を知る。
  4. 日本語で多段階の括弧(かぎ括弧)を、直接入力または \enquote で組み、三点リーダーを正しく書く。
  5. 本文と数式の中で LaTeX が小数・位取り・パーセントをどう組むかを予測し、日本語の慣習に合うように書く。

段落と改行

LaTeX にとって、ソースは行ではなく段落に分かれている。欧文では、ソースの改行は一つのスペースに相当し、連続する複数のスペースは一つに相当する。一方、和文の文字(漢字・仮名・全角の約物)の直後の改行は、luatexja が取り除くので空きを生まない。日本語はもともと語をスペースで区切らないからである。これに対して空行は段落を終え、連続する複数の空行は一つに相当する。命令 \par は空行とまったく同じ働きをする。実際、エンジンは空行をすべて \par に変換している。段落の内部では、エンジンは段落全体を考慮して各行の終わりを決める。これは最初の課で見たとおりである。段落と段落の間では、文書クラスの規則が適用される。すなわち、最初の行の字下げ、段落を隔てる垂直の空き、ページの末尾や先頭に一行だけを残すことを避ける働きである。

例日本語の段落

ソースの第一段落の中の改行は結果に現れない。連続する二つの空行は、\par と同じく、一度の段落替えしか生まない。

LaTeX コード
\documentclass{article}\usepackage{luatexja-fontspec}\setmainjfont{Noto Serif CJK JP}\usepackage{indentfirst}\begin{document}\section{仮説}節の最初の段落も一字下げにする。これが日本語の組版の慣習である。​空行は新しい段落を始める。​​空行が二つでも、段落は一つだけ。\par 命令 par も同じ働きをする。\end{document}
結果
結果

2 行目と 3 行目は日本語のための設定である。luatexja-fontspec パッケージは fontspec に日本語組版の機能を加え、\setmainjfont は和文の書体を選ぶ。見出しの直後の段落を字下げしないのは、LaTeX が既定で従う英米の慣習である。日本語ではすべての段落を全角一字下げにするので、4 行目の indentfirst パッケージで最初の段落も字下げさせている。字下げの幅は \setlength{\parindent}{1\zw} で全角一字分にできる。実際の日本語文書では、これらを最初から日本語の慣習どおりに設定する ltjsarticle や jlreq のようなドキュメントクラスもよく使われる。

改行、すなわち \\ またはそれと同等の \newline は、段落を終えずにその位置で行を終える。次の行は同じ段落に属し、字下げなしで始まり、前の行から離されない。\\[6pt] という形は改行した行の下に垂直の空きを加え、\\* という形は、文書の解剖の課で見たように、さらにその位置での改ページを禁じる。

例一つの段落の中の三つの改行
LaTeX コード
\documentclass{article}\usepackage{luatexja-fontspec}\setmainjfont{Noto Serif CJK JP}\begin{document}段落の 1 行目、\\同じ段落の 2 行目、\newline3 行目、\\[6pt]そして追加の空きのあとの 4 行目。​本当の段落は字下げから始まる。\end{document}
結果
結果

しかし、改行は段落ではない。改行を段落として使うのは、ワープロから移ってきた人がもっともよく犯す組版の誤りである。理由は三つある。第一に、段落の形はクラスが決めるのであって、段落を改行で区切った文書は、エンジンから見れば段落が一つしかない。あとでクラスを変えたり、段落間の空きを広げたりすると、本当の段落は変わるが偽の段落は変わらない。第二に、ページの末尾に一行だけ残すことを避ける規則のような、段落を守る規則は、段落でないものには適用されない。第三に、空の行を残すための改行は、不良度が最大のボックスの警告を生む(luatexja を使うと、この警告が出ないこともあり、誤りはいっそう気づきにくい)。また、段落の先頭での改行はエラーである。改行には、行が単位となる正当な用途がある。詩の行、住所の各行、手で組んだ表題の各行などである。