コンテンツへスキップ
Topos Uranos

要約

この課では、学術的な文章に付随する装置、すなわち注・引用・韻文の組み方を学ぶ。\footnote による脚注、注番号を句読点の前に置くか後に置くかという慣習、そして \footnotemark と \footnotetext による注番号と注本文の分離を扱う。この分離によって表の中の脚注の問題が解決する。節見出しの脚注がなぜエラーになるのか、あるいは luatexja を読み込んだ日本語の文書ではなぜ目次に入って二度現れるのか、オプション引数でそれをどう避けるのか、文書の表題に \thanks で注を付ける方法も説明する。次に、csquotes パッケージの \enquote による行内の引用とその入れ子の段階、quote 環境と quotation 環境による別行立ての引用、そして引用の長さに応じて行内に組むか別行立てにするかを自ら判断し、末尾に出典を添える \blockquote 命令を学ぶ。最後に、題辞、verse 環境による詩、そして一行ずつ注釈する文章に欠かせない lineno パッケージによる行番号を扱う。

学習目標

  1. 文書が従う慣習の定める位置に注番号を置いて脚注を付け、脚注をその場に書けないときには注番号と注本文を分離できる。
  2. 節見出しや文書の表題に、エラーを起こさず、注が目次に入らないように注を付けられる。
  3. \enquote を使い、日本語の括弧と入れ子の段階に従って行内で引用でき、段階が一つ多いときに生じるエラーを予測できる。
  4. 行内の引用と別行立ての引用のどちらを使うかを選び、\blockquote がどちらに組むかを予測できる。
  5. 題辞と詩を組み、文章の行に番号を付けて、番号を手で書かずにその行を注釈し参照できる。

脚注

脚注は、本文を中断させてしまうもの、たとえば補足説明、付随的な情報、翻訳についての断り書きを本文の外に出す。注番号が現れるべき正確な位置に \footnote{…} と書けば、あとは LaTeX が行う。注番号に番号を振り、同じページの下部に同じ番号で注本文を組み、本文と隔てる罫線を引く。番号付けは自動である。冒頭に新しい脚注を挿入すれば後続の脚注はすべて番号が振り直されるので、番号を手で書くことは決してない。article クラスでは、番号は文書全体を通して振られる。

注番号の位置はどうでもよいわけではない。二つの慣習が並び立っている。スペイン語やフランス語の組版では、注番号を句読点の前に置き、注を付ける語に密着させる。英語の組版では句読点の後に置く。日本語の横組みの文献では前に置くことが多いが、後に置く媒体もある。肝心なのは掲載先の規定に従い、それを一貫して適用することであり、この課の例は前者に従う。そうであれば、\footnote は語の直後、句点や読点の前に書く。ただし密着させて書く必要がある。欧文では、語と \footnote の間の空白は本文の空白であり、注番号が語から離れて、迷い込んだ数字のように見えてしまう。

例脚注

結果が狭い範囲に本文とページ下部の両方を示せるよう、例のページは小さくしてある。ページの大きさを定める geometry パッケージは、文書の構造の単元で学ぶ。3 行目と 4 行目は「文書の解剖」の課で説明した日本語のための設定である。実際の日本語文書では、ltjsarticle や jlreq のような日本語用のドキュメントクラスもよく使われる。

LaTeX コード
\documentclass{article}\usepackage[paperwidth=11cm,paperheight=6cm,margin=8mm]{geometry}\usepackage{luatexja-fontspec}\setmainjfont{Noto Serif CJK JP}\begin{document}翻訳は 1927 年版に拠る\footnote{明らかな誤植は断りなく訂正した。}。ただし、注記した箇所は除く\footnote{これらの箇所では写本の読みを採った。}。\end{document}
結果
結果

二つの注番号はいずれも語に密着し、句点の前にある。注本文は、文と同じく句点で終わる。

注番号と注本文の分離

\footnote を丸ごと書けない場所がある。典型的なのは表である。単元を改めて学ぶ tabular 環境の中では、注番号は現れるが、注本文は警告もなく失われる。そうした場合には脚注を二つに分ける。\footnotemark が次の番号の注番号をしかるべき位置に置き、表の外に書いた \footnotetext{…} が、最後の注番号の番号で注本文を組む。同じ手法は、完全な脚注が機能しないあらゆる場所で使える。

例表の中の脚注
LaTeX コード
\documentclass{article}\usepackage[paperwidth=11cm,paperheight=6cm,margin=8mm]{geometry}\usepackage{luatexja-fontspec}\setmainjfont{Noto Serif CJK JP}\begin{document}実験室で測定した比重:​\begin{tabular}{ll}水 & 1.00\footnotemark \\油 & 0.92 \\\end{tabular}\footnotetext{4 °C の蒸留水。}\end{document}
結果
結果

\footnote{4 °C の蒸留水。} をセルの中に書くと、値の横に数字 1 は現れるが、ページ下部に脚注は一つも出ない。

見出しの中の脚注

節見出しに脚注を付けるのは自然に見えるが、問題を起こす。理由は、節見出しが一度しか使われないわけではないことにある。LaTeX は見出しを本文に組むだけでなく、目次のために補助ファイルにも書き込むが、脚注はそのファイルへ移るべきではない。欧文の文書では、その結果、文書に目次がなくても、わかりにくいエラー(Use of \@xfootnote doesn't match its definition)が出る。luatexja を読み込んだ日本語の文書ではエラーにならず、そのぶん問題は見えにくい。脚注は見出しとともにそのまま補助ファイルに書き込まれる。

例見出しに入れられない脚注
LaTeX コード
\section{問題の起源\footnote{1900 年に初めて提起された。}}

ログにはエラーが一つもないが、補助ファイル .aux には次の行が記録される。脚注が見出しとともに目次へ向かったのである。目次のない文書ではこの行は何も起こさない。目次があると、二回目のコンパイルから脚注が二度現れる。目次の見出しに注番号 1、本文の見出しに注番号 2 が付き、ページ下部に同じ注本文が二つ並ぶ。

コンパイルログ
\@writefile{toc}{\contentsline {section}{\numberline {1}問題の起源\footnote {1900 年に初めて提起された。}}{1}{}\protected@file@percent }

解決策は \section のオプション引数である。これは目次用の短い見出しとしてすでに知っている。角括弧の中身は目次へ移り、波括弧の中身は本文にだけ組まれる。脚注を長い見出しに入れ、短い見出しでそれを省けば、脚注はあるべき場所に現れ、目次はきれいなままである。文書の表題には専用の命令 \thanks がある。\title や \author の中に書き、番号の代わりにアスタリスクの付いた注を作る。謝辞、著者の所属、あるいは本文が学会発表の改訂版であることを示すのに使う。

例文書の表題と節見出しの注
LaTeX コード
\documentclass{article}\usepackage[paperwidth=11cm,paperheight=11cm,margin=8mm]{geometry}\usepackage{luatexja-fontspec}\setmainjfont{Noto Serif CJK JP}\renewcommand{\contentsname}{目次}\title{記憶について\thanks{学会発表の改訂版。}}\author{鈴木遥}\date{}\begin{document}\maketitle\tableofcontents\section[問題の起源]{問題の起源\footnote{1900 年に初めて提起された。}}\end{document}
結果
結果

目次の見出しには注番号がない。\thanks の注にはアスタリスクが、節の注には番号 1 が付く。\thanks は番号を消費しないからである。5 行目は目次の見出しを日本語にする。article クラスの既定は英語の「Contents」だからである(ltjsarticle や jlreq では最初から「目次」になる)。