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Topos Uranos

要約

この回では、文書の全体的な形とそのページの形をどう選ぶかを学ぶ。三つの標準クラス article、report、book を、それぞれが備えるもの(章、タイトルページ、偶数ページと奇数ページ、概要)によって比べ、そこからどのクラスがどの学術的な文書の種類に合うかを導く。ヨーロッパの組版の伝統に沿う選択肢として、この講座が勧める KOMA-Script のクラスを紹介する。用紙、文字サイズ、片面印刷か両面印刷か、タイトルページ、草稿モードを決めるクラスオプションを順に見る。クラスが広い余白を取る理由と、行の長さを損なわずに geometry パッケージで余白を変える方法を説明する。最後に、ページスタイル、ヘッダ、フッタを扱う。

学習目標

  1. 文書の種類と印刷のしかたに応じて article、report、book、あるいはそれに対応する KOMA-Script のクラスから選び、その選択を各クラスが備えるものによって根拠づける。
  2. 用紙、文字サイズ、片面印刷か両面印刷か、タイトルページ、章の始まるページ、草稿モードを決めるクラスオプションを指定し、その効果を予測する。
  3. 余白、行の長さ、読みやすさの関係を説明し、規定を満たしつつ行を長くしすぎない余白を geometry で設定する。
  4. クラスが独自に決めるページも含め、文書の各ページがどのページスタイルになるかを予測し、\pagestyle と \thispagestyle で変更する。
  5. fancyhdr または scrlayer-scrpage で独自のヘッダとフッタを組む。

クラスが全体の形を決める

どのソースも、1 行目で文書のクラスを宣言する。これは文書の解剖の回で見たとおりである。クラスは飾りではない。どのような区分があるか、\maketitle が何をするか、概要のための環境があるか、余白をどう配分するか、偶数ページと奇数ページを区別するかを決める。そうであれば、クラスの選択は形についての最初の決定であり、それぞれのクラスが何をもたらすかを知ったうえで決めるのがよい。

LaTeX には学術的な文章のための標準クラスが三つある。それぞれの現行版で確かめた違いは次のとおりである。

  • article には章がない。最上位の区分は \section である。タイトルは本文と同じページに組まれ、概要には abstract 環境があり、片面印刷である。
  • report は \chapter を加える。タイトルは独立したページを占め、概要も同様で、片面印刷である。各章は、偶数・奇数を問わず新しいページから始まる。
  • book には章とタイトルページがあるが、両面印刷である。偶数ページと奇数ページの余白が交互に入れ替わり、各章は奇数ページ、つまり開いた本の右側のページから始まる。そのために白紙のページを残すことになってもそうする。abstract 環境はない。本には概要を付けないからである。
例概要付きの論文

article では、タイトル、概要、本文が最初のページを共有する。ここでの日本語の設定は babel を使わないので、abstract 環境の見出しは英語の「Abstract」のままになる。そこで 4 行目の \renewcommand で \abstractname を「概要」に変えている。2 行目と 3 行目は日本語のための設定で、luatexja-fontspec が fontspec に和文組版の機能を加え、\setmainjfont が和文の書体を選ぶ。

LaTeX コード
\documentclass{article}\usepackage{luatexja-fontspec}\setmainjfont{Noto Serif CJK JP}\renewcommand{\abstractname}{概要}\title{三つの緯度における昼の長さ}\author{鈴木遥}\date{}\begin{document}\maketitle\begin{abstract}三つの都市で一年を通じた日照時間を比較し、その違いを緯度によって説明する。\end{abstract}\section{問題の設定}昼の長さは季節と緯度によって変わる。\end{document}
結果
結果

同じソースを report で組むと、タイトルは 1 ページ目に単独で、概要は 2 ページ目に単独で置かれ、本文は 3 ページ目から始まる。

クラスが備えていないものはエラーになり、エラーはそのことを正確に告げる。article の 5 行目に \chapter{問題の設定} と書くと、その命令はこのクラスには存在しない。

コンパイルログ
! Undefined control sequence.l.5 \chapter            {問題の設定}

同じように、book の中の概要は \begin{abstract} で止まる。

コンパイルログ
! LaTeX Error: Environment abstract undefined.

文書の種類によってクラスを選ぶ

以上から一つの基準が導かれる。それはページ数ではなく、構造と印刷のしかたによる。学術誌の論文、授業のレポート、短い報告書には章がない。そのクラスは article である。長い報告書や学位論文には章がある。多くの大学が求めるように片面で印刷するなら、そのクラスは report である。本、あるいは両面で印刷し本のように製本する学位論文には book がふさわしい。ただし、この基準には調整の余地がある。すぐ後で見るクラスオプションを使えば report を両面で印刷できるので、概要を必要とする製本論文がそれを諦める必要はない。また、学術誌が独自のクラスを提供しているなら、決定はすでに下されている。そのクラスを使う。