コンテンツへスキップ
Topos Uranos

要約

この回では、ある仕事の文献データベースの作り方を学ぶ。文献データベースとは .bib ファイルのことであり、biblatex と biber はそこから各文献のデータを取り出して、引用と参考文献リストを組版する。文献のデータを引用の様式から切り離しておくのがなぜよいのかを説明し、その分離を論理的マークアップと結びつける。エントリの構造、よく使う種類、引用キーの選び方、種類ごとに必要なフィールドを述べ、biblatex のフィールド名を従来の BibTeX のものと比べる。人名、複合姓、姓の前置詞、団体著者の書き方を示し、タイトルの大文字を保護しなければならないのはどういうときかを説明する。biber がダイアクリティカルマーク付きの文字をそのまま読めること、bibtex プログラムがそれを誤って並べる理由を示し、Zotero からのエクスポートを紹介する。最後に、よくある誤りとその見分け方を扱う。

学習目標

  1. 引用の様式から切り離された一つの文献データベースがあれば、データに手を触れずにすべての参考文献の見た目を変えられる理由を説明する。
  2. よく使う種類のエントリを、キーと種類ごとに必要なフィールドを備えて正しく書く。
  3. biblatex のフィールド名と従来の対応名を見分け、データベースを処理するプログラムに応じてどちらを使うかを決める。
  4. 姓、名、前置詞が正しく解釈されるように人名と団体名を書き、それぞれがどう並べられ、どう引用されるかを予測する。
  5. 結果と biber および LuaLaTeX のメッセージから、コンマの抜け、キーの重複、エスケープしていない & 記号、リストに現れない文献を診断する。

なぜ文献データベースか

一つの参考文献は、性質の異なる二つのものを合わせ持っている。一つは文献のデータである。だれが書いたか、題名は何か、いつどこで出版されたか、どの雑誌の何ページに載っているか。もう一つは様式である。それらのデータを書く順序、それぞれの書体、データを区切る句読点、本文中での引用の形。文献のデータは変わらないが、様式は分野、雑誌、大学によって変わる。「Darwin, C. (1859). On the Origin of Species. London: John Murray.」と手で書く人は、二つを一行に溶かし込んでしまっている。雑誌が別の様式を求めれば、参考文献を一つ残らず書き直さなければならない。

これは、意味のある書式の回が本文について立てた区別と同じものである。論理的マークアップは各部分が何であるかを述べ、どう見えるかは別の場所で下す決定にゆだねる。ここでは、.bib ファイルが各文献が何であるかを述べ、biblatex パッケージがプリアンブルで選んだ様式に従ってそれをどう書くかを決める。そして biber プログラムが LuaLaTeX の二回のパスの間に実行され、データベースを読み、引用された文献を探して並べ、できあがったリストを biblatex に渡す。

ここから三つの利点が出てくる。第一に、各文献のデータは、十の論文で引用されても一度しか書かない。データベースが唯一の情報源であり、そこで直した誤りはすべての論文で直る。第二に、様式はオプション一つで変えられ、データベースには手を触れない。第三に、参考文献リストには引用した文献がちょうど過不足なく入り、その並びを決めるのは著者の記憶ではなくプログラムである。